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漢方薬
〜漢方薬は家族と医療者の味方〜

漢方薬の原料は自然界に存在する植物・鉱物です。
患者さんの体と心に働きかけ、自然由来の力で治癒力を高めることができます。
漢方薬には、大切な3つの「みかた(味方・見方・診方)」があります。

味方

漢方薬は家族と医療者の味方です。

病気の陰に隠れて生きるのではなく、元気になることを諦めないという選択肢があることは、患者さんにとっても家族にとっても希望になります。
その希望は、患者さんを救うのはもちろんのこと、現場で日々診療に当たる医師自身をも救ってくれます。
ガイドラインに沿った治療をしていても改善がないとき、検査結果で明らかな異常がないのに不調を抱えている患者さんと接するとき、医療者として限界や無力感を感じることがあります。しかし、そこに「漢方薬」という選択肢が増えることで、治療の幅は広がります。
漢方薬にはエビデンスも集積されており、即効性がある事例も多数あります。患者さんにとっても、医療者にとっても「治療法がない」という嘆きは、「他にも方法がある」という希望に変わるのです。

見方

漢方薬は病気と家族の「見方」を変えます。

私は、医学生のときに天疱瘡(てんぽうそう)という難病を発症し、ステロイド剤の内服や血漿交換を行いました。一度は退院したもののすぐに再発の気配があり、先行きが見えない中、根本的に治療できる方法を模索していました。そんな折に出会ったのが、漢方薬と鍼灸でした。
病気を治すという目標に向かって、西洋医学と東洋医学の治療を組み合わせることで、病気の「見方」が変わります。西洋医学の観点で細部の病理や病態を理解しながらも、東洋医学の「病気はバランスの乱れ」という包括的な考え方を取り入れることで、新たな道筋が見えてきて、患者として治療に対して希望を抱くことができました。

診方

漢方薬の診察方法は、新しい「診方」になります。

東洋医学では、心と体をひとつにして考える「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。これは、ー心と体は繋がっているー体の調子が良いと心まで元気になり、反対に心が元気だと体も元気になるというものです。つまり、「体から心」「心から体」の双方向のアプローチを同時に行うことで、心身ともに整えることができます。例えば、頭痛の治療を行う場合。頭痛だけが治るのではなく、目眩や動悸なども改善し、疲れにくくなるなど、体全体の調子が良くなることが期待できるのです。
漢方薬を飲み、生活を整えると、体調面以外にも良い変化が起こります。
最初は元気がなかった患者さんも、病気への見方や生活が変わったり、親子関係が良好になることすらあります。さらに子どもたちが、将来の夢や希望を話してくれることもあります。これまで自分の体と心に向き合うことで、人それぞれ幸せのヒントを掴んでいく姿をたくさん見てきました。その山あり谷ありの道のりを共に伴走させてもらうことが、私は好きです。

「学校が楽しくなった」「やる気が出てきた」「自分の気持ちがわかるようになった」「子どもとの関係が良好になった」「この子なら大丈夫だと信じられるようになった」「もう大丈夫」と言って卒業した、たくさんの親子の輝く笑顔が忘れられません。
もちろん、全ての患者さんに漢方薬の効果があったわけではありません。
医師がどれほど頑張っても、患者さん自身が治療の主体となって治す意思が重要だからです。医師は漢方薬を処方することは出来ますが、漢方薬を飲み、日々の生活を見直し、親子の対話を重ねるのは患者さん本人と支える家族に他なりません。そして、医療者はその過程を全力でサポートする役目を担います。
医療者と患者さんが同じ方向を向き、丁寧に積み重ねる時間を通して実現できる温かい世界と親子の笑顔には、計り知れない喜びがあります。
読者の皆さんにも、漢方薬を通して広がる喜びの世界を味わってもらいたいと願っています。このページがその一助となることができたら、これほど嬉しいことはありません。
未来につながる、かけがえのない「親子の今」を大切にできるようなお手伝いがしたい。子どもを診る皆様と共に、子どもが育ち次の社会を作っていくことを見据えた医療を行いたい。
子どもの世界をより良くする仲間となってください。温かな眼差しで子どもを見守る世界を共に作っていきませんか?

参考文献)
鈴村水鳥.「子どもをみる医師のための漢方入門書(仮称)」中外医学社 ※2023年刊行予定