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温かな言葉で、深い治療を——京大漢方外来で心に残ったこと


先日、京都大学の漢方診療ユニット 谷川聖明先生の外来を見学させていただきました。
以前からご高名な先生ですが、実際の現場で学ばせていただく時間は想像以上に濃く、心に残るものでした。

今回、私にとっていちばん学びが大きかったのは、
「古来からそういうものだ」とされてきた知恵を、そのまま“伝統”として置いておかず丁寧に解明していく姿勢でした。

漢方には、経験として積み重ねられてきた言葉がたくさんあります。
けれど先生は、それを「昔からそうだから」で終わらせず、
なぜそう言えるのか、どの現象がそれを支えているのかを、臨床の場で確かめながら言語化していく。
伝統を大切にすることと、解明しようとすることは対立ではなく、むしろ同じ方向を向いている——そんなふうに感じました。

もちろん、処方の組み立てそのものも圧巻でした。
生薬の構成を丁寧に考え、その特徴から処方を選ぶという基本を、静かに、しかし揺るぎなく積み上げていく。
ここは私自身も大切にしている部分で、先生の診療を拝見しながら「やはりここだよね」と、深くうなずく時間でもありました。

そしてもう一つ、大きな学びがありました。
線維筋痛症や悪性腫瘍のように病態が複雑で、治療目標も多層になりやすい領域で、漢方をどう組み立て、どこまでを担わせるのかという視点です。
安全性と役割分担を意識しながら、患者さんの苦痛や生活の質(QOL:Quality of Life)に寄り添う設計の重要性を、改めて感じました。

さらに、谷川先生のお人柄もまた忘れられません。
患者さんに向き合う姿勢がとても温かく、やわらかい言葉で丁寧に話を聴きながら、人生全体を丸ごと受け止めていらっしゃる。
「治す」だけではなく、「その方の生き方に寄り添う」こと。
漢方医として大切にしたい軸を、静かに、深く学ばせていただきました。

当日は、学生さん向けの講義にも参加させていただきました。
漢方医学の教育は、まだ十分な時間数を確保できていない現状もあります。
そのなかで先生が話されていた、

「これからの未来を担っていく学生さんたちに、何か一つでも残ってくれたら」

という言葉が、とても胸に沁みました。

また、谷川先生が
「京大生は未知への探究心が強く、漢方にも高い次元で関心を寄せている」
とお話しされていたことも印象的でした。
漢方が、臨床としての役割をもつことと同時に、まだ答えの出ていない問いに取り組む“探究の対象”として見られている——その空気感が新鮮で、学ぶ側のまなざしに触れると、教える側もまた背筋が伸びるのだと感じました。

漢方という一つのご縁を通して、こうして新しい学びをいただけたことに、心から感謝しています。
外来での一言や、処方を組み立てる手つき、学生さんに向けられた眼差し。
そのどれもが、私にとっては「これからの診療の指針」になるような時間でした。

谷川先生、お忙しい中、外来研修を受け入れていただき、本当にありがとうございました。

少し先のお知らせです。
2026年6月、富山で開催される第76回日本東洋医学会学術総会にて、株式会社栃本天海堂 共催のランチョンセミナー2(LS-2)を担当させていただく予定です。

テーマは
「親子が喜ぶ“最初の一手” 子どもの育ちを支える 湯液治療」
です。

日時は 2026年6月13日(土)12:30〜13:30
会場は 富山国際会議場 第2会場(201+202) となります。
座長は 谷川聖明先生(谷川醫院 院長/京都大学医学部附属病院 特任病院准教授)
演者は 鈴村水鳥(名鉄病院 小児漢方内科/かけはし糖尿病・甲状腺クリニック 漢方内科) です。

ランチョンセミナーは 事前申込制 となります。総会ホームページよりお申し込みください。
https://convention.jtbcom.co.jp/76jsom/seminar.html