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『はじめの一歩 漢方処方MAP』を拝読して


谷川聖明先生(谷川醫院 院長/京都大学医学部附属病院 特任病院准教授)のご著書『はじめの一歩 漢方処方MAP』(南山堂)を拝読し、まず最初に深く心を動かされたのは、その内容の幅広さでした。(画像は南山堂様のホームページよりお借りしました https://www.nanzando.com/products/detail/47281)

目次を開いた瞬間、本当にさまざまな症状が網羅されており、日常診療で出会う多くの場面に対して漢方治療の視点が丁寧に示されていることに驚きました。ここまで広い領域を扱いながら、なおかつ読者が迷わず学べるように整理されていることに、強い感銘を受けました。

さらに印象的だったのは、実践問題が付されていることです。読むだけで終わるのではなく、理解を確認しながら学びを深めることができる構成になっており、知識を実地につなげていくうえで非常に有用です。単に情報を並べるのではなく、読む人が実際に使えるようになるところまで見据えて作られている、先生の誠実さが伝わってまいりました。

また、本書は見開きで学べる構成となっており、陰陽や虚実による使い分け、病期に応じた捉え方などが、視覚的にもたいへん理解しやすく示されています。なかでも、イラストの素晴らしさには強く心を打たれました。適応やイメージが一目で伝わるよう工夫されており、読者にとってのわかりやすさが徹底して追求されていることを感じます。

私自身、書籍を執筆した際に、イラストというものが、単に文章に添えられる補助的なものではなく、むしろ文章以上に多くの調整や工夫を要するものであることを実感しました。たった一枚の絵で、数秒のうちに相手へ伝えたいことを届けるためには、どれほど丁寧な擦り合わせが必要か。筆者が何を伝えたいのかを、どれほど精緻に言葉にし、共有しなければならないか。その大変さを少しでも知っているからこそ、本書にこれほど多くのイラストが盛り込まれていることに、本当に驚かされました。

そして同時に、これほどの書籍を世に送り出すために、谷川先生がどれほどのご尽力を重ねられたのだろうかと、ただただ頭が下がる思いでした。

さらに、症例や実践的な内容が会話形式で展開されていく部分も、とても印象に残りました。難しくなりがちな内容が、読む側の頭の中に自然に入ってくるように工夫されており、そこにもまた、読む人への深い配慮が感じられます。本当にこの本は、「読む人のための本」なのだと思いました。どうすればわかりやすくなるのか、どうすれば学びの一歩を支えられるのかを、谷川先生が強く意識して書かれていることが、ページを追うごとによく伝わってきます。

書籍というものは、内容を書くだけで完成するものではありません。構成を考え、表現を磨き、図やイラストを整え、どのようにすればより伝わりやすくなるのかを、一頁一頁、丁寧に積み上げていく営みの先に、ようやく一冊の本が形になります。そこには、編集者の方々、イラストを担当される方々、印刷や制作に携わる方々など、本当に多くの方のお力があります。私自身もそのことを痛感しており、この書籍が持つ完成度の高さに、なおさら深い敬意を覚えます。

そのうえで、この『はじめの一歩 漢方処方MAP』には、谷川先生の読みやすさへのこだわりと、読者を導こうとする優しさ、そして学びを育てようとする温かさが、隅々まで込められているということです。専門的でありながら親しみやすく、実践的でありながら押しつけがましくない。その絶妙なバランスは、並々ならぬご配慮とご努力の上に成り立っているのだと感じました。

これから漢方を学ぶ方にとっても、すでに日常診療の中で漢方に取り組んでおられる方にとっても、多くの示唆に富む、たいへん貴重な一冊であると思います。

谷川先生のご尽力に、心より敬意を表するとともに、ぜひ多くの方にご一読いただきたい書籍として、強くおすすめしたいと思います。