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春の下関で——第129回日本小児科学会 モーニング教育セミナーを終えて

春の下関で——第129回日本小児科学会 モーニング教育セミナー4を終えて

「漢方に興味はあるけれど、どこから始めればいい?」
「病名で処方してしまう。本当にこれでいいのか不安」
「検査に異常がないのに、家族の困りごとは大きい——」

外来で、そんな声をよくお聞きします。

先日お知らせしていた第129回日本小児科学会学術集会モーニング教育セミナー-4「小児科外来ではじめる『子育て漢方』」(2026年4月18日・下関市生涯学習プラザ)を、無事に終えることができました。

座長の滝田 順子先生(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学 教授)、会場にお越しいただいた先生方、共催の株式会社ツムラの皆様——改めて、心よりお礼申し上げます。

朝8時、第7会場。春の下関で、多くの先生方と朝のひとときを共有できたことは、日々の外来と執筆を支えてくださった方々への、かけがえのない還元の時間となりました。


問診と身体所見から——子どもと家族の両方をみる漢方

演題は、「小児科外来ではじめる子育て漢方 ― 子どもの世界に寄り添う、きほんの3処方 ―」

本セミナーでは、問診や身体所見を考慮し、子どもと家族の両方の視点を持った漢方処方をテーマに、明日の外来につながるお話をさせていただきました。

西洋医学と東洋医学は、相反するものではありません。お互いの長所をうまく使う——その両方の視点を、まず大切にしたいと思っています。

顕微鏡で細部をみるような西洋医学的視点と、双眼鏡で広い視野でみるような東洋医学的視点。漢方薬を処方するうえでも、西洋医学の治療基盤は欠かせません。その両方を持つことで、よりよい医療につながる——それがこのセミナーの軸でした。

東洋医学が得意なのは、ウイルス性感染症やリンパ管腫、検査で異常のない不調など。西洋医学が強みを持つのは、新生児疾患や外科治療。アレルギー疾患、慢性副鼻腔炎、神経発達症などは、併用することでより効果が発揮しやすい領域でもあります。

東洋医学における小児の健康とは、「食べられること」「排泄ができること」「よく眠れてよく遊べること」——このバランスが整っている状態を指します。「虚実」や「寒熱」、舌診や腹診。正常な子どもの舌は薄いピンク色で舌苔が均一ですが、寒がり(虚証)であれば白っぽく、暑がり(実証)であれば赤みが強くなる。そんな土台の話も、あわせて共有しました。


きほんの3処方——明日の外来の入り口に

ここでは小建中湯・甘麦大棗湯・柴胡桂枝湯を中心に取り上げました。いずれも虚証向け。甘くて飲みやすい——子どもに継続してもらいやすい点も、小児漢方の大きな味方です。

この3つをおさえておけば、不眠や腹痛、頭痛など外来で多い困りごとを幅広くカバーでき、身体症状から精神症状まで応用できます。

処方量の目安は、0.1〜0.2g/kg(日)。成人量を1とした場合、1歳は1/4、3歳は1/3、6歳は1/2程度——ただしメーカー・製剤によって1袋あたりの量が異なるので、添付文書の確認はぜひ習慣にしていただきたい点です。

小建中湯——虚弱体質の代表薬

疲労・倦怠感、冷え、神経質、腹痛。舌診では地図状舌、腹診では腹直筋の緊張くすぐったがり——そんな所見があれば、よりおすすめしやすい処方です。

漢方薬は「長く飲まないと効かない」と思われがちですが、短期間でも変化が現れることは珍しくない。改善がみられたら、柔軟に減量・終了を——そこも、外来で意識しておきたいポイントです。

甘麦大棗湯——「こころの問題」の代表薬

夜泣き、ひきつけ、神経症、不眠。「こころの問題」の代表薬として、問診では不安感をキーワードに。処方の際は小麦アレルギー甘草による偽アルドステロン症への注意も。

子どもだけでなく、家族全体の眠りと心が、少しずつ整っていく——そんな変化も、外来でよく目にします。

柴胡桂枝湯——こじれやすい体質への備え

抗炎症の「小柴胡湯」と、風邪の初期の「桂枝湯」を合わせた処方。風邪症候群や感冒など、使用範囲の広い漢方薬です。五苓散を加えれば柴苓湯、半夏厚朴湯を加えれば柴朴湯——応用の広がりも、あわせて触れました。


きほんの3処方+α——抑肝散・大柴胡湯の活用

きほんの3処方のほかに、抑肝散大柴胡湯も取り上げました。


病名処方から抜け出すために

締めくくりでは、こうお伝えしました。

病名処方から抜け出すためには、症状だけでなく、問診や身体所見から漢方薬を選ぶこと。

子どもだけの問題として捉えるのではなく、家族も含めた治療の視点を持つこと。

母子同服、生活上のアドバイス、減量・終了の柔軟な判断。きほんの3処方という入り口から、漢方でこれだけできる——そんな希望を、会場にお渡しできていたら嬉しいです。


著書が、再びベストセラーに——ありがとうございます

講演会を終えて間もなく、拙著**『子どもをみる医師のための子育て漢方』(中外医学社)**が、Amazon「東洋医学」カテゴリで再びベストセラーに選ばれたとのご連絡をいただきました。

2025年2月の刊行当初から、外来や学会でお話ししてきた「子育て漢方」の考え方を、一冊にまとめた本です。執筆のとき、ずっと胸にあった言葉があります。

「漢方は、家族と医療者の味方である」

子どもの世界を信頼する立ち位置から、病気の枠を超えて本質と家族を診る——その想いを込めました。

刊行直後にも同カテゴリでベストセラーに選んでいただいた経験があります。今回、第129回日本小児科学会のモーニング教育セミナーを終えたあと、再び——執筆者として、言葉にできないほどの励みです。

会場でお会いした先生方、遠方からブログや書籍を通じて応援してくださった先生方、日々の診療で子どもと家族に向き合うすべての医療者の皆様。

本当に、ありがとうございます。

外来のそばに置いておける一冊。明日の外来で「もう一歩踏み出したい」と思っている先生方の味方になれているなら、これ以上の喜びはありません。

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書籍情報・ご購入はこちら

『子どもをみる医師のための子育て漢方』
著者:鈴村 水鳥 監修:山口 英明 出版社:中外医学社

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中外医学社 書籍詳細ページへ


おわりに

春の下関での朝の50分間。そして、著書への温かなご支援——どちらも、これからの診療と執筆を支える大切な糧になりました。

検査で異常のない腹痛・頭痛、夜泣き、癇癪、神経発達症の特性……「名前のつきにくい不調」に悩む親子に、問診と身体所見、そして家族の視点から寄り添う診療の入口を、一緒に広げていけたら嬉しいです。

改めて、ありがとうございました。。