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自閉スペクトラム症児におけるセロトニントランスポーターおよびドーパミントランスポーター結合能:SPECTによる検討

今回の論文検索の目的:自閉スペクトラム症(ASD)とセロトニンの関係性についてより詳しく調べる

タイトル:Serotonin and dopamine transporter binding in children with autism determined by SPECT

結論:SPECTを用いた検討において、ASD児は社会性や意思決定に関係する内側前頭葉への取り込みが低下していることがわかりました(p=0.002)。これはセロトニントランスポーター(SERT)結合脳の低下を示します。特に、幼児期より思春期で顕著でした。今回の研究は、ASD児において特に生後早期のセロトニン作動性神経終末の成熟数が少なくシナプスの密度が希薄であることを示唆しています。

論文情報

タイトル:Serotonin and dopamine transporter binding in children with autism determined by SPECT
著者:Ismo Makkonen, Raili Riikonen, Hannu Kokki, Mauno M Airaksinen, Jyrki T Kuikka
雑誌Developmental Medicine & Child Neurology, 2008; 50: 593–597
DOI: 10.1111/j.1469-8749.2008.03027.x

背景

自閉症スペクトラム障害(ASD)では、セロトニン神経系の異常が長年注目されてきました。特にセロトニントランスポーター(SERT)は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の作用点でもあり、臨床的にも重要です。しかし、自閉症児の脳におけるSERT結合能を直接評価した研究はこれまでありませんでした

研究の目的

本研究は、自閉症児におけるSERTとドーパミントランスポーター(DAT)の結合能をSPECTで測定し、比較群と比較することを目的としました。

方法

  • 対象:自閉症児15名(平均8歳8か月、男14・女1)、比較群10名(平均9歳10か月、男5・女5)。
  • 診断:ICD-10基準およびChildhood Autism Rating Scale(CARS)。
  • 手法:放射性トレーサー[¹²³I]nor-β-CITを用いた単一光子放射断層撮影(SPECT)。
    • 評価部位:内側前頭皮質(MFC)、中脳、側頭葉、線条体。
    • 小脳を参照領域とし、各部位のSERT/DAT結合能を算出。
  • 自閉症群は鎮静下で撮像され、鎮静の影響は成人データを用いて補正。

主な結果

  • SERT結合能
    • 自閉症群ではMFCと中脳で有意に低下
    • 鎮静補正後もMFCの低下は有意(p=0.002)
    • 側頭葉でも低下傾向がみられた。
  • DAT結合能
    • 線条体におけるDATは差がなく、異常は認められなかった。
  • 年齢との関係
    • 自閉症群では年齢が上がるにつれてセロトニン結合能がさらに低下する傾向。

考察

  • MFCは「心の理論」や「他者の視線の理解」など、社会的認知に深く関わる領域です。
  • この部位でのSERT低下は、自閉症における社会的相互作用の障害と関連すると考えられます。
  • 一方でDATには異常がなく、変化はセロトニン系に特異的と解釈されました。
  • 著者らは、自閉症ではセロトニン作動性シナプスの数や密度が少なく、発達過程でのシナプス成熟が障害されている可能性を指摘しています。